歴史を書き換える日本の歴史教科書 ~ 住民は米軍に追いつめられて「集団自決」したのではない

 

歴史を正確に記さない日本の歴史教科書

住民は米軍に追いつめられて「集団自決」したのではない

1945年4月1日、米軍が無血上陸。沖縄守備隊第32軍が、住民を強制的に現地召集して構成した捨て石の部隊を米軍の矢面につきだし、みずからは首里で「談笑」しているとき、

 

第32軍司令部「ただ沈黙を守るだけ」

…いま首里山上に立つ日本軍首脳らは、…ある者は談笑し、また他の者は煙草をふかしながら、悠々敵の必死の上陸作戦を眺めている。何故だろうか?我々日本軍はすでに数ヵ月来、首里北方高地帯(牧港-我如古-和宇慶)に堅陣を布き、アメリカ軍をここに誘引し、一泡も二泡も吹かせる決意であり、その準備は整っているからなのだ。

《「沖縄決戦 高級参謀の手記」(八原博通/中公文庫) 》

 

読谷と嘉手納 - 賀谷支隊と特設第1連隊

… 怒濤のような敵大陸軍の真只中に戦力零に等しい私たち飛行場大隊だけを追いやり、自分達は南部の堅城に拠っている軍司令部の冷酷な仕打は、特設第1連隊将兵が、決して忘れることができないのだ。体の底からこみ上げてくる怒りを、私は火焰を見つめながら必死に抑えていた。

 

沖縄島、追い詰められる住民たち

第32軍が放棄した読谷・嘉手納の住民たちは、米軍に追いつめられ、ぞくぞくと投降していった。住民が追いつめられたとき、人は、抗うか、投降する。米軍に追いつめられたから「集団自決」するのではない。

 

http://www.archives.pref.okinawa.jp/USA/116356.jpg

The Strong and the Weak--Two Marines help an aged man to the safety of the rear lines on Okinawa, as a third member of the party carries the Man's meager possessions. Only children, women, and the aged and infirm, were found by assaulting Marines as they pushed across the island during the first few days following the landing.

強者と弱者 -- 前線から離れた安全な場所に老人を連れて行く二人の海兵隊員。海兵隊上陸から二、三日の間に子供、女性、年寄り、体の弱いものばかりが発見された。(1945年4月1日撮影)

写真が語る沖縄 詳細 – 沖縄県公文書館

 

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Native Okinawans carry their possessions as they come out of their hiding places in the hills and surrender to the Marines.

隠れていた山から所持品を持って出てきて、海兵隊に投降する地元の人々。(1945年4月2日撮影)

写真が語る沖縄 詳細 – 沖縄県公文書館

 

教科書から「日本軍」が消える日

日本軍の厳命・強制・制裁なしに強制死は起こりえない

 

教科書検定の季節になるたび、日本軍が教科書から消える

 

それがまさにちょうど沖縄で「集団自決」が集中しておこっていた3月下旬から4月初旬にかけてであるため、日本の教科書検定に関わるものたちはみなそろって歴史の知識が欠落しているのではないかと思うほどで、

 

まるで、日本軍が住民に手渡した自決用の手榴弾や、スパイの「処分」という名の処刑と粛清が、まるで無かったかのようだ。

 

アメリカ軍の攻撃に追いつめられた住民は、通常、抵抗するか、投降する。「集団自決」という他に類を見ない「集団死」を導くものは、敵の攻撃ではない。

 

ゆえにこれらの「歴史教科書」の記述は、歴史的に明らかになっていることを記述しない点において、歴史的に不正確なものであり、意図的にミスリーディングさせるものである。

 

2023年3月の記事

 文部科学省は2024年度から小学校で使われる教科書の検定結果を28日に公表した。沖縄戦については6年生用の社会科の全3社が「集団自決(強制集団死)」に触れたものの、その要因として「アメリカ軍の攻撃で追いつめられ」といった説明しかなく、「日本軍の関与」を示唆する記述が後退した。当時、官選知事だった島田叡氏が「命は宝だ。生きぬけ」と訴えたと記述した社もあり、沖縄戦の一面的な見方につながるとの懸念が識者や沖縄戦体験者から出ている。

沖縄戦の「集団自決」 日本軍の関与に触れず 教科書検定で小6社会の全3社 | 沖縄タイムス

 

2022年3月30日の記事

文部科学省の検定を通った高校教科書「日本史探究」の7冊全てに「集団自決」(強制集団死)の記述があった。だが「軍命」を明記した教科書はなかった。日本軍による強制性に触れたのは実教出版の2冊だけで、山川出版社は日本軍の関与にすら触れなかった
 2冊が検定を通った山川は、そのうちの1冊で「『集団自決』に追い込まれた人々も含めおびただしい数の犠牲者を出し…」と記した。もう1冊では「日米両軍に多大な犠牲を出しただけでなく、『集団自決』に追い込まれた人々も含め、多数の島民が犠牲になった」と記述。どちらも日本軍の関与に触れていない。

これでは、なぜ「集団自決」がおこったのかもわからないだろう、山川出版社

 

また、さらに2021年には、「新しい歴史教科書をつくる会」による自由社の教科書が合格している。言語道断である。

 

 文部科学省は30日、2020年度の教科書検定の結果を公表した。本年度は高校教科書(主に1年生用)が対象だが、昨年度不合格だった中学歴史2点も再申請し、自由社の教科書が合格した。同教科書は沖縄戦について「日本軍はよく戦い、沖縄住民もよく協力しました」と、県民が進んで戦争に協力したかのように読みとれる記述がある。住民虐殺や「集団自決(強制集団死)」など日本軍の加害の側面への言及もなく、識者からは「殉国美談」との批判が出ている。

 自由社は、「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴史・公民教科書を発行している。昨年度の検定では405カ所の検定意見が付き、不合格になっていた。

 今回合格した同社教科書は、1879年の琉球処分についても、伊波普猷の言葉を引用する形で「一種の奴隷解放だった」と表記している。

沖縄戦は「住民が協力」 中学の歴史教科書が検定合格 「集団自決」への言及はなし | 沖縄タイムス

 

歴史的に、明白になっていることを子どもにでも理解できるように伝えることがたいせつである。本土が沖縄を生きた砦「捨て石」として利用し、「玉砕」を住民に強制しながら、住民が「米軍に追いつめられて」死んだ、などと子どもに教えるようでは、歴史を教えたことにすらならない。

 

「集団自決(強制集団死)」という極限状態は、けっして敵軍に追いつめられておこるものではない、捕虜になることを絶対に許さぬ日本軍の「玉砕」の厳命と日本兵の暴力的圧力という強烈なバインドが連動してはじめて生起したものであり、こうした集団死が生起した場所も限定される。

 

そもそも、「自決」とは高位の軍人が戦争の敗北に責任をとって自死することであり、その意味では、慶良間諸島の壕にこもっていた三人の隊長たちは、住民をスパイ容疑で処刑しながらも、自らは最終的に極めて安全に投降し、「自決」も「玉砕」もせず投降し、やがて復員していった。

 

ではなぜ、慶良間諸島の住民は愛しい家族もろとも、自死しなければならなかったのか。

 

「軍官民共生共死の一体化」の強制と「集団自決」

当時の沖縄の日本軍は、地上戦を前にした1944年11月、「軍官民共生共死の一体化」の方針を出し、陣地の構築や食糧・弾薬の運搬、戦闘に住民を総動員した。軍の機密を知る住民が捕虜になることを許さず、「捕虜になれば、男性は八つ裂きにされ、戦車でひき殺される。女性は米兵の慰みものにされる」などと恐怖心を植えつけ、「敵に投降する者はスパイとみなして射殺する」と警告・実行した。攻撃用と「自決」用の手榴弾を配った事例もある。沖縄戦における「集団自決」が、日本軍の命令・強制・誘導なしに起こり得なかったことは歴史的事実である。

沖縄戦の強制集団死(「集団自決」)をめぐる文部科学省の検定意見に関する質問主意書

 

防衛庁戦史室の編纂した『沖縄方面陸軍作戦』では、「戦闘員の煩累を絶つため
犠牲的精神によって集団自決をとげ、皇国に殉じた」と書かれていますが、この主張は事実に反します。戦場の住民は、自主的に死を選択したのではなかったので
す。… 「強制され」あるいは「追いつめられた」人々の死を、「集団自決」と言うことはできません。… 「集団自決」と言われてきた言葉の内実は、皇軍の強制と誘導による住民の集団死」であることを、くりかえし指摘しなければなりません。

安仁屋政昭沖縄戦の「集団自決」 (強制集団死)」pdf

 

どこにでも米軍はやってきたが、集団自決と呼ばれる住民の集団死がおこったのは、きわめて限定された場所である。日本軍が住民に強いた異常な関係なくして、住民の「集団自決はおこらない。

 

日本軍の基地を置かず住民を救った前島

やがて米軍が上陸してきたとき、分校長を先頭に投降して島民は無事だった。

林 博史『沖縄戦と民衆』(大月書店、2001.12)p177 

 

 

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